毎日の暮らしにリズムを与える、永遠のベーシック - HIBI vol. 2 -

ずっと暮らしの中心にあり続ける、定番となるテーブルウェア HIBI。触れてこそわかる使い心地を追求したコレクションです。​今回はカトラリーのリニューアルをきっかけに、プロダクトデザインを手掛けた安積伸さんに改めてデザインのインスピレーションやプロセスについて伺いました。
—HIBIカトラリーのデザインをする際にどのようなことを意識されましたか?
日常で使われるプロダクトをデザインする時はいつも、自分自身の生活の中で得た感覚を手がかりにしています。カトラリーを使う様々なシーンを思い出しながら、そこで何を快適と感じてきたか、記憶を反映させました。1人で食べるご飯を寒々しく感じさせず、暖かな時間にしてくれるカトラリー。家族や友人と一緒に食事をするとき、楽しい気分に寄り添ってくれるデザインを目指しました。
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—どのようなプロセスでデザインを仕上げていきましたか?
HIBI シリーズのカトラリーデザインは、日本人の食生活になじむ使い勝手の良さやサイズ感を持ちながら、海外ユーザーの暮らしの中でも独自の個性・輝きを失わないものでありたいと考えました。それはカトラリーという、西洋の食文化の中で長い時間をかけて培われてきた道具のデザインを日本人である私の目を通して、少しだけ前に進めるという事です。テーブルウェアのデザインに潜む歴史や文化をふまえた上で、繊細なバランス感覚が要求されるデザインに、慎重に臨みました。

これらのカトラリーは、毎日のように使う事を前提に、現代の生活の中で求められる機能性、汎用性を高める事を意識しました。具体的には、私達の生活で頻繁に出会うメニューを想定しながら使い勝手を検討しました。何を切り、何をすくい、何を混ぜ、何を突き刺し、何を巻くのか、その際、我々の指先や掌はカトラリーのどこを支え、どの様に操っているのか。どこに重心を設定すれば心地よく感じるのか。あらゆる食事シーンを想定しながら、出来るかぎり繊細に調整したいと考えました。

デザインの大きな方向性が決まった後も、細かな調整に時間をかけています。人が体を通して得る感覚は繊細で鋭敏です。視覚的に違いがわからない変化も、手に持ち唇を当ててみると快不快の差をはっきりと感じることが出来ます。今はCADを使ってデザインし、3Dプリンタで実寸のプロトタイプを作る事が簡単にできますので、デザインのイメージと提供したい体感が一致するまで、何度も実寸での試作検討を行いました。小さなアイテムですが、段ボール箱3個分ぐらいの試作品を作ったのではないでしょうか。

またカトラリーは、ナイフ・フォーク等、複数を揃えて使用する事の多い器物ですので、テーブル上でのサイズ感、数が並んだ時のおさまり、皿や器とのバランスの良さも意識しています。
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—各アイテムについて、ディテールのこだわりを教えてください。
【スプーン・フォーク】
スプーンやフォークの先端は、サイズ・形状によって唇に与える感覚が繊細に変化しますので、そういった事まで慎重にコントロールしたいと思いました。
特に、スプーン類の先端形状はクラシカルな雰囲気になりすぎず、かつ、口に含んだ時に当たる唇への感覚を大切にしながら、ひと匙の容量と幅・深さ等の調節を行っています。

【ナイフ】
刃物は古来より人を惹きつけてやまない道具です。テーブルナイフも、それ単体で魅力を放つべきだと考えました。
このナイフのデザインは、先ずは手や指先がどの様にナイフを支えるかを観察し、人が接触する点や面を再確認するところからスタートしています。指先の力がしっかりと伝わりつつ、手当たりの良さを提供する形状を出来るだけ素直な形で導き出す事を意識しています。全体的に柔らかなアウトラインを持つデザインですが、持ち手のボディから刃先に向けて面のふくらみの頂点を直線的に通す事で、刃物の勢い(=切れ味・信頼性)を感じさせたいと思いました。

【バターナイフ】
自分自身の朝食がパン食派なので「バターナイフ」はそれ自体が非常に魅力的なアイテムだと長年感じていました。今回初めてバターナイフのデザインを手がけましたが、私自身が「毎日使いたい」と思う要素を盛り込んだものとなっています。
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—どのようにHIBIカトラリーを使ってもらいたいですか?
日常の食事で、毎日楽しく使ってもらえればと思います。
そしてさらに何セットか余分にそろえて、時々、友人や親しい人たちと食事するときにも日々感じている充実感を共有してもらうことが出来れば、さらに嬉しく思います。
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[DESIGNER PROFILE]
安積伸
2005年 a studio 設立。プロダクトやファニチャーのデザインを中心に、生活機器、照明、家電、 AV機器から空間設計などを幅広く手がける。2016年よりロンドンから日本に拠点を移し、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授に就任。


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