アウトドアでも美味しさを手に - TRAVEL TUMBLER vol.2 -

こだわりを持ちながらも柔軟なライフスタイルをおくる人に向けたTRAVEL TUMBLER。
2017年の発売開始からサイズやカラーバリエーションも増え、KINTOのシグネチャーアイテムの1つになりました。

今回は、デザイナー・安積伸さんのインタビュー。デザインのインスピレーションやプロセスを中心にお聞きしました。
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—TRAVEL TUMBLERのオリエンテーションを受けた際にはどのような印象をお持ちになりましたか?
ロンドンから帰国して1つ目のプロジェクトだったことを覚えています。 「日本でしかできないこと」と「日本でできていないこと」にチャレンジしたいと、強く思っていた時期でした。 また「真空ステンレスボトル」と聞いて、「樹脂」と「ステンレス」の成型や嵌合のディテールに注意が必要と感じました。私はデザイナーとしてネジや構造のおさまりが気になってしまうのですが、そういった視点でもこれらの製品はまだやるべき事がある、新しいことができそうだと感じました。
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—デザインのインスピレーションはありましたか?
ヨーロッパでも日本でも、人に触れるものは柔らかでフレンドリーな姿にしなければいけない、という圧を感じていたのですが、そうでなくとも恰好良く使い勝手の良いデザインが出来る事を確認したい、という気持ちがありました。「丸みを帯びない=無骨」ではなく、直線的で凛とした印象と、エレガントさを両立させたいと思いました。 たどり着いたインスピレーションが酪農業で使われている「ミルク缶」です。特に古典的なミルク缶は金属板を曲げて作っているため直線的な形状にならざるを得ないのですが、その思い切りのよさに惹かれます。どんな形も実現できる時代だからこそ、姿としての潔さ、凛とした表情を取り戻したいと感じました。
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—ディテールのこだわりを教えてください。
一見シンプルな直線の組み合わせのようですが、くびれの位置や角度など、どこをとっても「これがベスト」というものを細かく突き詰めています。 例えば、蓋のエッジはどこまで尖らせるか。指あたりが痛くならない丸みと、印象としてのシャープさをKINTOさんと工場と共にどこまでつき詰められるか探りました。 蓋を外したときの美しさにもこだわりたく、穴を露骨に見せるのではなく溝の奥に隠し、そこから飲み物がスムーズに出てくる構造を提案しました。電気機器の放熱スリットなどに時々見られるディテールの応用です。 ボトル本体の底辺に斜面を加えたのは、見慣れたドリンク缶のランゲージで親近感を与えるという事もありますが、持ち運ぶタンブラーなので見た目に軽やかな印象を与えたいという思いから来ています。また、ドリンクホルダーに入れるときにはガイドになる、という機能も視覚的に表現しています。 細部にこだわり試行錯誤を繰り返し、KINTOさんと思いを共有して作り上げたプロジェクトでした。
—最近はどのようなシーンで使っていますか?
大学に出勤するときに自宅でハンドドリップしたコーヒーを入れて持っていきます。途中で空になったらコーヒーショップでリフィルしてもらったり。頻繁に使っていますし、実際に使う中で、飲み心地の良さや洗いやすさを確かめています。蓋の形状も気に入っていますね。指あたりがよく、薄さや角度、グリップ感がしっくりきます。エッジがあるので少しの力でしっかり握る事が出来、理にかなった形である事を感じます。
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—今までを振り返ってみて感じることはありますか?
KINTOさんとのプロジェクトはいつも自分のためにデザインして、自分自身が「絶対に欲しい!」と思えるプロダクトを目指しています。 また、出来れば毎日使用したいものなので、使い勝手が悪いと繰り返し使う気になれません。プロダクトデザインは、使ってもらって初めて意味があると思っています。使ってもらう事でヒトとモノとの関係性が出来上がり、プロダクトは完成すると考えています。見た瞬間から心を奪われ、使えば使うほど良さを感じて更に好きになる、そんなプロダクトをデザインしたいと思っているのですが、トラベルタンブラーでは理想に近づく事が出来たのではないかと感じています。

vol.1はこちら

DESIGNER PROFILE

安積伸

安積伸

2005年 a studio 設立。プロダクトやファニチャーのデザインを中心に、生活機器、照明、家電、 AV機器から空間設計などを幅広く手がける。2016年よりロンドンから日本に拠点を移し、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授に就任。


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