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Design Story: UNITEA カジュアルに使える自由で軽やかなティーウェア

2006年の発売以来、多くの人に親しまれているKINTOのロングセラーコレクション UNITEA。日々気軽にティータイムを愉しんで欲しいという想いを込めて、カジュアルな使い心地と、シンプルでモダンなライフスタイルに合う佇まいを目指しました。

UNITEAのデザインを手がけるプロダクトデザイナー柴田文江さん、KINTO企画開発チーム西奈美と、ものづくりの背景に迫ります。

Interviewer: Koji Kato

UNITEAが生まれた背景

商品を開発した経緯を教えてください。

西奈美: 当時のKINTOはヨーロッパの商品を輸入する事業もあり、日本のマーケットを色々な角度から見ていました。お茶を淹れる道具といえば陶磁器の急須が主流で、ガラスのティーウェアは海外製の装飾的で、エレガントなデザインのものがほとんどでした。ファッションやライフスタイルが、よりシンプルでカジュアルになっていく時代に合うガラスのティーポットを作りたい、という思いが開発の出発点となりました。

柴田: ガラス素材で新しいティーウェアを作りたいとお話をいただいた時に印象に残ったのが、ガラスのカップで温かいものを飲むという習慣が日本ではあまりなかったということです。そこから、誰もが日常的に使えるガラスのティーセットが出来たらいいなと考えていきました。

西奈美: デザインを依頼する際に、KINTOから柴田さんにお伝えしたのは、一人一人が好きなお茶を好きな茶器で飲む「個茶」というスタイルです。普段使いできる安心感があって、女性でも男性でも使いやすいということ、そして、リッド、ストレーナー、ジャグなど、それぞれのアイテムの口径を揃えることで、異素材からなるパーツを組み合わせてフレキシブルに使えるということでした。

柴田: そうでしたね。パーツをカスタマイズできるようなシステマティックなもので、ユニセックスに普段使いできてるものをと、デザインを考えていきました。そこでポイントになったのが「グリップ」のデザインでした。当時のガラスのカップは人差し指、中指、親指で持ち、残りの指を立てて飲むような仕様でしたが、UNITEAでは4本の指でホールドして持てるようにハンドルを大きくすることで、ガラスのカップが特別なものではなく、暮らしの中に入るようにしたいと思いました。

ポイントになったのが「グリップ」のデザイン...4本の指で持てるようにハンドルを大きくすることで、ガラスのカップが特別なものではなく、暮らしの中に入るようにしたいと思いました。

当時どのような思いでデザインされたのでしょうか。

柴田: もちろんデザイナーとしては永く愛されて欲しいと思っているわけですが、それは狙ってできるものではありません。それまで家電などの工業製品を中心にデザインしてきて、中にメカが入っていない、形だけで差別化を求められる製品は初めてでした。売れなかったらデザインのせいだと思って、最初はドキドキしていました(笑)。でも食器のような日用品をデザインしたいという思いはありましたので、ご依頼をいただいた時はとても嬉しかったです。

デザインをする上で苦労した点はありますか。

柴田: 実際に進めてみると口径を合わせて、複数の製品をデザインすることは難しかったです。容量の違うものを作る時に、全体の大きさを自由に変えてもいいのであれば、相似形で作ることでファミリーになりますが、口径を変えずに倍の容量のものを作るのは意外と難しいんですよね。
まずは形に大小をつけても、キャラクターのあるモチーフを探すことから始めました。当時はガラス素材のカップでお茶を飲むという習慣があまりなかった時代だったので、もう少しフレンドリーで使いやすい感じにしたいと思い、曲率を変えることでそれぞれの容量も調整できて、見た目にも優しい下ぶくれのモチーフを考えました。そうすることでサイズの違う展開や用途が変わっても、ファミリー感を出せるのではと仮説を立てながら検証していきました。

現代の日常に溶け込む器

UNITEAが目指したのはどのような暮らしの風景ですか?

西奈美: 開発当初、ティー = エレガントというイメージが強かったため、日常的にもっと気軽にティータイムを愉しんで欲しいという思いがありました。気負いするようなものではなく、家族や友人とリラックスしながら過ごす時間に、何気なく使っていただけるような、カジュアルな使い心地と、シンプルでモダンなライフスタイルに合う佇まいを目指しました。

柴田: 当初、ユーザーの固定概念を変えたいという思いと、こういう使い方があったのねと気づかせたいというか、大げさに言えば、人々や世の中の価値観を変えることや、ヒエラルキーを変えることであったり、それまでのエレガントなガラスカップというイメージを超える、カジュアルでユニセックスなティーセットを作りたいという思いがありました。その時も今も共通しているのは、豊かさを提供したいということです。今日ではティーセットでお茶を淹れることも含めて、スローでほっこりした豊かさが求められているのではないでしょうか。

デザインをする上で心がけていることを教えてください。

柴田: UNITEAに関していえば、自分もヘビーユーザーなので、リアリティを持ちながら考えることを大切にしています。自分の作品でありながら自分のものではない、誰かの暮らしの道具になることを意識してデザインしています。結果的に私らしいデザインにはなるとは思うのですが、意識としてはそのような気持ちでデザインしています。

テクノロジーが発達した現代において、デザインに対する考え方や役割が、変わった部分もあると思います。例えば3Dプリンターで好きなものを誰もが簡単にカタチにすることもできるようになりました。そのような時代におけるデザイン、そしてデザイナーの役割はどのようなものだとお考えですか?

柴田: 難しいのですが、カタチや機能だけでなく、暮らし方や生き方に対して、いろんな価値観があるという、ある種のビジョンを提示するのもデザイナーの仕事だと思っています。
リッチなものを使う幸せ、シンプルで素朴なものを使う幸せといろいろあると思います。昔は物をたくさん持っていたり、お金持ちになることが幸せであったりしたと思います。でも今はそういったことが必ずしも幸せには結びつかないということにみんなが気づいたと思うんです。
そういった意味では私の場合は、デザインでこういう幸せもあるのでは?ということを世の中の人たちに提示することも大切な役割ではないかと思っています。それはいろんな幸せのベクトルをつくることで、UNITEAに関しては、ガラスの新しい使い方、それまではなかったひとつの方向性をデザインで示すことでした。

デザインでこういう幸せもあるのでは?ということを世の中の人たちに提示することも大切な役割ではないかと思っています。...UNITEAに関しては、ガラスの新しい使い方、それまではなかったひとつの方向性をデザインで示すことでした。

柴田文江 プロダクトデザイナー / デザインスタジオエス代表

エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、ホテルのトータルディレクションまで、インダストリアルデザインを軸に幅広い領域で活動をしている。代表的な作品に、無印良品「体にフィットするソファ」/オムロン「けんおんくん」/カプセルホテル「9h (ナインアワーズ)」/JR東日本ウォータービジネス「次世代自販機」/庖丁「庖丁工房タダフサ」/木のおもちゃ「buchi」などがある。多摩美術大学教授。著書「あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ」(ADP)。

※本インタビューは2018年に掲載された内容をもとに、一部再構成しています。

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