自然の光、人の気配やあたたかさ、新しさや懐かしさ。五感を通して心地よいと感じる空間には、さまざまな出会いとストーリーがあります。丁寧につくられた素材、料理、器とともに、日常がより心地よく豊かになるようなヒントをKINTOスタッフが探しに行きました。
今回訪ねたのは、東京・板橋区で「農と食」を起点にクリエイティブな活動に取り組むレストランPLANT。都市農業の価値や可能性を広げるTHE HASUNE FARMと、フリーランスで活躍するシェフたちとのコラボレーションから生まれる料理が愉しめます。
PLANTで提供される料理の主役は、歩いて数分先にあるTHE HASUNE FARMで採れる野菜。
ほうれん草の根っこ、ブロッコリーやそら豆の葉っぱなど、普段は捨てられてしまうような部分もシェフの発想によって新たな可能性が見出されます。シェフは週ごとに入れ替わるので、それぞれ注目する野菜の部分も、使い方も違い、様々な新しい気づきがあるとのこと。
「THE HASUNE FARMサポーターズ」も農作業を手伝っています。子供から大人まで、土に触れ、農業につながりを持てるオープンな環境も魅力。
畑の直売所は”Picking after order”(注文後に収穫する)というスタイル。お子さまがいる場合は、秤を持って自ら収穫もできます。
レストランの外には、のびのびと過ごすニワトリたち、食と農の循環を支えるコンポスト、イベントが行えるスペースやハーブの花壇なども。
レストランの空間や器について、オーナーの川口さんに伺いました。
—PLANTの空間づくりで意識したことは何ですか?
「うちはもともと農家で、ここは実家です。畑の使い方を一新することと、少し遠くてもわざわざ来てもらえるような場所にしたいなと思って、設計の人と話をしていきました。基本はコース料理で予約制にしてるんですけど、シェフと近い距離感で畑の話をしたり『プレートの中のこの野菜なんですか』という話も弾んだりするので、そういうのがいいなと思ってます。」
—レストランで使っている器はどのようにセレクトしているのですか?
「農家なので、野菜の配達がてら色々な素敵なレストランを見て、これいいなと思うものについて教えてもらったりしています。野菜を卸しているeatrip soilで作家さんの器の展示を見たり、あとはギャラリーFUUROの方々や、シェフたちが色んな作家さんを知っているので、みなさんから情報を聞いています。」
「作家さんの器も使っているんですけど、古材をアップサイクルしたものなども取り入れています。PLANTのコンセプトとして、捨てられたものとか、ちょっと古くなったもの、都市農業のように高齢化や後継者不足でだんだん無くなってきてしまったものにフォーカスをして、光を当てるということを大切にしています。」
「ReBuilding Center Japan(リビセン)でレスキューされた瓦。シェフたちはパンをのせたり、おしぼりをのせたりして使っています。」
「古材で作られた器は、益子のpejiteでたまたま出会ったもの。素敵だなと思って買いました。」
現在は週毎に担当シェフが替わっていて、KINTOスタッフが訪ねた週を担当していたシェフの青柳さんは、PLANTの他にも循環型社会を考え実践するélabを活動拠点としていてます。美味しく食べれて、自然とのつながりや循環を感じられる料理をつくっている青柳さんにも器についてのお話を伺いました。
—趣味として器を愉しむことはありますか?
「好きな作家さんの個展がやっていれば見に行ったりします。歪みやひび割れがあって、普通は捨てられてしまうような器のダイナミックで繊細な表情とか、特別な素材は使わずに身近なものの積み重ねで作られた独特の世界観とか、作家さんの表現をみると自分も料理人として頑張ろうという気持ちになります。」
—プレートの選び方について、おすすめのポイントはありますか?
「平らなプレートは肉や魚とあわせてソースをひく時にも綺麗に見えるので、レストランで使うことが多いです。逆に家庭でそういう料理をあまり作らない場合は、中心が窪んでいるプレートの方が盛りやすかったり、汁気のある料理でも使えて便利かもしれません。ただ、平らなプレートにサンドイッチをのせると凄くおしゃれになったりもします。サラダを高く持ったり、パーティの雰囲気を楽しみたい時のために、平らなプレートを数枚持っていてもいいかもしれないですね。」
—料理の盛り付けやプレゼンテーションについてアドバイスはありますか?
「お花を生けるのと似ているかもしれないですが、こうしよう、綺麗にしよう、と考えると上手くできないので私自身は無心でやっています。お箸やカトラリーをちゃんとセッティングするということだけでも、いつもと違う雰囲気になります。PLANTはカトラリーレストに庭の木の枝を使っているんですけど、他にもハギレとか、箸豆の代わりに石を使うとか、ありもので意外とおしゃれに見えたりします。決めつけちゃうとそれまでなので、色んな発想で楽しめるといいと思います。」